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A.蜂窩織炎の治療 既にお話ししましたようにリンパ浮腫では、組織間隙内に蛋白と水分が過剰に貯留し循環が悪くなっています。そのため僅かな細菌が侵入しただけで、一気に脚または腕全体に広がり、増殖してしまいます。強い炎症が起きると毛細血管壁のすきまが大きくなり、蛋白と水分が大量に組織間隙内に出て来てしまい、そこで固まって線維網を作ってしまいます。この状態を蜂窩織炎 -ほうかしきえん- といい、リンパ浮腫治療の上で最も避けなければならない状態です。
強い炎症が起きると毛細血管壁のすきまが大きくなり、蛋白と水分が大量に組織間隙に出てきてしまい、むくみは急激に悪化します。
蜂窩織炎  症状は、患肢に蚊に刺されたような赤い斑点が所々に出現する場合が多いようですが、突然患肢全体が赤くなり高熱を発する場合もあります。(写真)

この場合には挙上以外のリハビリはすべて刺激となり炎症を悪くするのでできません。できるだけ脚または腕の赤い部分を冷やし、患肢を高めに維持して安静を保って下さい。そして、すぐに医師に相談し、抗生物質をもらい比較的大量に服用しなくてはいけません。その際大切なことは、血液検査をしてもらいながら、完全に治るまで薬を飲み続けることです。良くなったと思って適当に止めますと、組織間隙内のどこかに潜んでいた細菌が何かの機会に再び増えて再発してしまいます。 蜂窩織炎は再発しやすく、時には一生抗生物質を服用しなくてはいけないとさえいわれます。飲酒は厳禁です。

ただ、蜂窩織炎は重症でない限り、2~3日で急性期は終わります。抗生剤も十分量必要なのはこの期間だけで、発赤消失後はすぐ減量して下さい。むくみがあると治りにくいので、急性期を過ぎたら弾力包帯などで強引にむくみを減らすこともします。

一旦家事など仕事は一切中止し治療に専念した方が、結局は治療にかかる時間が少なくてすみます。つまり、炎症があると弾力スリーブ・ストッキングは着用できず、また、マッサージなどの積極的な方法もできません。それでなおかつ浮腫液を排除して炎症を治りやすくするには、四六時中患肢を挙げているしかないわけです。

■ 実際の方法


1) 患肢の挙上(できれば食事、洗面、トイレのみ動く)
2) 患肢の冷却(水枕や冷却グッズを工夫して利用する)
3) 抗生物質の服用(できるだけ早期から服用し、速やかに減量する。)
4) 状態を見ながら、やむなく利尿剤、弾力スリーブ・ストッキングまたは弾性包帯を併用し、むくみの減少を図る。
5) 飲酒は厳禁。

B.蜂窩織炎の予防

蜂窩織炎になるとリンパ浮腫をとても悪くしてしまうことも多いので、細菌(病原菌)を体内に入れないよう極力注しなければいけません。そのため、虫刺されや土いじりなどにも注意し、手袋、長袖のシャツ、ズボンなどを着用し傷がつかないようにし、特に爪周囲の清潔に心掛けます。水虫も原因となります。薬用石鹸の使用も良いでしょう。体力が低下しても発症しやすくなりますので、疲れないようにすることも大切です。

■ 実際の方法


1) 虫刺されなど外傷を避けるため、手袋、長袖のシャツ、ズボンなどを着用する。
2) 土いじりなども極力注意する。
3) 爪周囲の清潔に心がける。
4) 水虫があれば治療する。
5) 保湿クリームや薬用石鹸を使用する。
6) 無理や過労は避ける。